物流業界の人手不足の原因と解決策|運送業・倉庫の現状をデータで解説

2026.10.27

物流業界の人手不足の原因と解決策|運送業・倉庫の現状をデータで解説

求人を出してもドライバーが集まらず、倉庫では出荷締切までに作業が終わらないと悩んでいませんか。欠員を残業や応援で埋める日が続くと、採用を増やすべきか、設備やシステムを導入すべきか、判断しにくくなります。

物流業界の人手不足には、担い手の減少だけでなく、荷待ち、小口配送、倉庫作業の繁閑差などが関わっています。そのため、運送と倉庫のどの工程に負荷が集中しているかを確かめ、採用・定着と業務改善を組み合わせることが必要です。

本記事では、人手不足の現状を統計で確認し、運送業と物流倉庫で異なる原因、2026年時点の制度対応、実行できる6つの対策を解説します。投資や外注を検討するときの比較項目も整理するので、自社の改善計画づくりに役立ててください。

物流業界の人手不足の現状|国土交通省などのデータ・グラフで確認

物流の人手不足を把握する際は、企業の不足感、倉庫の採用状況、将来の輸送力を分けて確認します。

それぞれが示す対象は異なり、どれか一つの数値で自社の必要人数を決めることはできません。

運輸・倉庫では正社員不足を感じる企業が65.6%

帝国データバンクの2026年7月調査では、正社員の人手不足を感じる企業の割合は「運輸・倉庫」で65.6%でした。全業種の51.3%を14.3ポイント上回り、物流に関係する企業の採用難がうかがえます。

調査対象の区分

正社員不足を感じる企業の割合

運輸・倉庫

65.6%

全業種

51.3%

上記の調査期間は2026年7月17日~31日で、全国の有効回答企業数は10,518社でした。ただし、この回答数は全体の件数であり、運輸・倉庫だけの回答企業数ではありません。

また、65.6%は「必要な従業員の約3分の2がいない」という意味ではなく、不足を感じる企業の割合です。業種区分には運輸と倉庫が含まれるため、倉庫作業員だけの不足率として引用することも適切ではありません。

自社で確認するべきなのは、どの職種で何人を募集し、何人が応募し、どの段階で採用に至らなくなるかという実績です。業界統計は役員説明の背景資料として使い、人員計画は自社の業務量と勤務条件から作成しましょう。

出典:帝国データバンク|人手不足に対する企業の動向調査 2026年7月

倉庫の人手不足データは、運送業と分けて確認する

倉庫では、運転者の不足とは別に、入荷、保管、ピッキング、検品、梱包を担う人材の確保が課題になります。物流倉庫分野の公的な運用方針には、以下の指標が示されています。

指標

対象時期と数値

読み取る際の注意

ハローワーク経由の求人数/応募人数

2024年1~12月:2.54

業界団体の会員調査で、厚生労働省の有効求人倍率とは集計が異なる

普通倉庫の従業員1人当たり所管面積

2019年度:633㎡、2023年度:674㎡

施設面積の指標で、作業時間や欠員人数を直接表すものではない

求人数/応募人数は、調査対象の倉庫で募集に対して応募が少ない状況を考える材料です。一方、従業員1人当たりの所管面積が広がっていても、商品の種類、入出荷回数、自動化の程度によって作業負担は変わります。

例えば、保管期間が長い荷物を扱う倉庫と、多種類の商品を毎日出荷するEC倉庫では、同じ面積でも必要な人員配置は異なります。面積の広さに加え、入出荷件数、注文に含まれる商品明細数、加工や返品処理の有無によって、必要な作業時間が変わるためです。

出典:外国人技能実習機構|物流倉庫分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針及び育成就労に係る制度の運用に関する方針

2030年度の輸送力不足は、需要などの前提によって変わる

国土交通省の2026年の検討会提言では、追加の施策を講じなかった場合の2030年度の輸送力不足を、需要などの条件別に試算しています。平均的な想定では約7%、厳しい想定では約25%の不足が示されています。

試算のケース

需要についての主な前提

2030年度の輸送力不足

平均的な想定

貨物の軽量化・高付加価値化、人口減少の影響を加味

約7%

2024年ベース

2024年度の輸送量の水準を想定

約15%

2019年ベース

2019年度の輸送量の水準を想定

約25%

各ケースでは供給側の前提にも違いがあり、この表は需要条件だけを変えた実験ではありません。また、輸送力不足の割合は、ドライバーの欠員率や、すでに配送できなくなった荷物の割合とは異なります。

この試算から得られる実務上の示唆は、採用だけでなく、荷待ち削減や積載効率の向上なども輸送を維持するための検討対象になるということです。自社の将来計画では退職予定者と物量予測を整理し、現状の運行を続けた場合と改善を進めた場合を比較しましょう。

出典:国土交通省|2030年度に向けた総合物流施策大綱に関する検討会 提言概要①

運送業の人手不足は当たり前?物流業界で深刻化する原因

業界全体で採用が難しくても、どの会社も同じ理由で人が足りないわけではありません。

募集条件、教育体制、取引先で発生する待ち時間を分けて調べると、自社で改善できる部分が見えてきます。

少子高齢化と若手の採用難で担い手が減っている

内閣府の「地域の経済2023」では、トラックドライバーの就業者数が1990年代半ばから2000年ごろをピークに減少し、その後は横ばいで推移していると整理しています。同資料が示す2022年の道路貨物運送業の年齢構成では、50代が29.8%を占め、全産業の21.8%より高い状況でした。

若年層の薄さは、その後の統計にも表れています。厚生労働省が掲載する2025年の労働力調査に基づく図表では、道路貨物運送業の29歳以下の割合は10.0%で、全産業の17.0%を下回りました。退職する世代に対して若い担い手が少ないことが、将来の人員補充を難しくする要因です。

採用の難しさは求人と求職者の数にも表れています。厚生労働省が掲載する図表では、2025年度のトラック運転者の有効求人倍率は2.49倍で、全職業平均の1.10倍を上回る水準でした。求人に対して求職者が少ないうえ、未経験者には免許・資格や実務を学ぶ期間も必要です。

退職者の補充と新人の育成を同時に進める必要があり、募集を始めても運行に必要な人数をすぐには確保しにくい構造があります。

出典:内閣府|(補論)物流業の人手不足問題

出典:厚生労働省|統計からみるトラック運転者の仕事 | 自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト

長時間労働と待遇の問題が採用・定着を難しくしている

運送業の待遇は、年収と、その収入を得るために働く時間を合わせて見る必要があります。厚生労働省の2025年調査に基づくデータでは、営業用大型貨物自動車運転者の年間労働時間は2,496時間で、全産業平均の2,076時間を上回っていました。一方、年間収入額は507万円で、全産業平均の546万円を下回る額でした。

勤務先や車種による違いはありますが、長い勤務に見合う収入が得られるかは、仕事を選ぶうえでの比較条件になります。

さらに、走行だけでなく荷待ちや荷役が重なり、帰宅時刻を見通しにくい職場では、休息や家族との時間を確保しにくいことも負担です。給与の表示額が希望に近くても、勤務時間や休日が生活に合わなければ、応募や継続勤務の障壁になり得ます。

残業代への依存度が高い給与体系では、労働時間を短縮すると収入も減りかねません。荷待ちや付帯作業に見合う運賃・料金を確保できなければ、会社も、拘束時間を減らしながら待遇を改善するための原資を得にくい状況です。求人広告だけでは解消できない取引条件と働き方の問題が、採用・定着にも関わっています。

出典:厚生労働省|統計からみるトラック運転者の仕事(2025年の労働時間・年間収入)

出典:内閣府|(補論)物流業の人手不足問題

小口・多頻度配送が増え、物量以上に作業が増えている

国土交通省の2021年の物流センサスでは、出荷1件当たりの貨物量を表す「流動ロット」が、2015年の0.98トンから0.83トンへ縮小しました。件数ベースで0.1トン未満の貨物が占める割合も79.2%から82.2%へ上昇しており、調査対象の出荷が小口化したことを示しています。

この調査は、鉱業、製造業、卸売業、倉庫業から出荷される貨物を対象とし、宅配便全体を捉えたものではありません。それでも、同じ重量をより多くの出荷単位に分けると、商品取り出し、梱包、送り状の発行、積込みなどを繰り返す必要があるという、作業負担の構造を考える材料になります。

例えば、同じ数量の商品を週に一度まとめて納品する取引と、毎日少しずつ納品する取引では、後者のほうが出荷や受渡しの回数が多くなります。荷物の総重量が変わらなくても、出荷のたびに準備や確認が発生するため、必要な作業時間まで同じとは限りません。

こうした作業量は、荷物の総重量だけでは捉えきれません。注文数や出荷明細数、配送先数も人員配置の判断材料になるのは、小口・多頻度の出荷によって、準備と確認を繰り返す回数が変わるためです。出荷をまとめる、納品頻度を調整するといった荷主との見直しが、人手不足対策の一つになります。

出典:国土交通省|第11回全国貨物純流動調査(物流センサス)の調査結果 について

2024年問題により、長時間労働に頼る運行が続けにくくなった

2024年4月から、自動車運転業務にも時間外労働の上限規制が適用されました。原則は月45時間・年360時間で、臨時的な特別の事情がある場合に特別条項付き36協定を締結しても、年960時間が上限です。

年960時間は総労働時間の上限ではありません。さらに、トラック運転者には拘束時間や休息期間などを定める改善基準告示も適用されるため、時間外労働の年間合計だけで運行の可否を判断することはできません。

以前から採用難がある会社では、この制度対応によって、長い運行や待機を残業で吸収する方法を見直す必要が生じました。倉庫作業員全員にドライバーと同じ上限が適用されるわけではない点にも注意が必要です。

安全と健康を確保しながら輸送を維持するためには、運行時間の記録に加え、荷待ちの短縮、荷役の分担、中継輸送などを検討します。現場の努力だけで調整できない部分は、荷主や納品先を交えた見直しが必要になります。

出典:厚生労働省|建設業・ドライバー・医師等の時間外労働の上限規制

物流倉庫が人手不足になる理由|倉庫特有の課題

物流倉庫では、「応募できる人が限られる条件」と「増員しても任せにくい作業」を分けて調べる必要があります。

以下、倉庫特有の課題を紹介します。

身体的な負担や通勤・勤務条件が応募を妨げている

重量物の持上げ、長い歩行距離、繰り返す荷役がある倉庫では、作業内容によって働ける人の範囲が限られます。暑さや寒さ、休憩設備、早朝・夜間のシフト、公共交通機関で通えるかどうかも、応募者が就業できる条件です。

倉庫ごとに負担は異なるため、すべての倉庫を一律に重労働と捉えるのは適切ではありません。自社で扱う荷物の重量、歩行距離、勤務時間を整理すると、どの条件が応募者を限っているのかが分かります。台車や搬送機器で持ち運びを減らしたり、短時間で担当できる工程を切り出したりすることが、募集できる人の幅を広げる方法です。

一例を挙げると、梱包の応援が必要なのに、求人では一日中重量物を運ぶ仕事と受け取られる説明になっている場合、実際に働ける人を逃している可能性があります。業務を分け、必要な体力や勤務時間を正確に伝えるのが大切です。

改善後も、求人と現場の実態が一致しているかを確認します。応募を増やすために負担を曖昧にすると、入社後の離職や配置のミスマッチにつながりかねません。

繁閑差と属人化が、必要な人員を確保しにくくしている

セール、季節商材、月末出荷などで物量が変動する倉庫では、平均的な一日の人数だけを基準にすると、繁忙日に処理能力が足りなくなる場合があります。さらに、保管場所や検品条件を熟練者しか把握していなければ、応援人員を増やしても任せられる作業が限られます。

確認するのは、日別・時間帯別の入出荷量と、ピッキング、検品、梱包それぞれの処理時間です。梱包だけが滞っているのか、商品を探す時間が長いのかによって必要な対応は変わります。

作業手順を写真や短い説明で共有し、保管場所の表示を統一すれば、新人や別工程の担当者が応援しやすくなります。多能工化を進める場合も、一度にすべてを覚えてもらうのではなく、作業ごとの習熟を確認して担当範囲を広げましょう。

さらに荷主と調整できるなら、入荷の集中や急な出荷変更を減らすことも検討します。人員を最大需要に合わせ続ける方法と、物量を平準化する方法の両方を比較すると、固定費と処理能力の折り合いをつけやすくなります。

物流の人手不足を放置すると、配送・経営・現場にどう影響する?

欠員が続くと、必要な便の確保や締切までの出荷が難しくなり、追加手配の費用や現場の負担が増えるおそれがあります。影響を確認するときは、運送と倉庫のどこで問題が生じているかを分けて記録しましょう。

確認する影響

運送で起こり得る場面

倉庫で起こり得る場面

自社で確認する記録

納期・出荷の遅れ

必要な便を確保できない

集荷までに梱包が終わらない

遅延件数、出荷残

費用の増加

追加便や外部輸送を手配する

応援要員や再作業が増える

追加手配費、作業時間

従業員の負担

配車変更や待機が重なる

特定の担当者に応援が集中する

残業、欠勤、離職理由

品質・安全への懸念

余裕のない運行になる

確認漏れや誤出荷が発生する

ミス、事故、ヒヤリハット

ただし、遅延や事故には天候、設備、作業手順なども関わります。人手不足がどの程度影響したかを判断するには、発生時刻や担当工程を、その日の物量や設備の状態と照らし合わせる必要があります。原因を分けて把握することが、増員と設備・手順の改善のどちらを優先するかを決める手掛かりです。

また、経営への説明では、待遇を改善するための人件費と非効率によって発生する追加コストを分けます。給与を抑えていても、応援や再作業が積み上がれば全体の費用は下がりません。どの費用を払って、どの負担を減らすかを明確にしましょう。

日々の出荷を維持する応急対応と、次の繁忙期に向けた改善も分けて考えます。急な欠員には納期や配置の調整を行い、継続する問題には採用条件や作業設計を見直します。その際、休息や安全確認を削って処理量を確保する方法を前提にしないことが重要です。

国土交通省の物流効率化施策|荷主・運送業・倉庫に求められる対応

物流の効率化は、運送会社だけで完結する課題ではありません。納品時刻や荷姿を決める荷主、貨物を受け渡す倉庫など、関係者の協力が必要です。

制度対応を進める際も、自社の立場に応じた役割を確認しましょう。

2025年から荷主・物流事業者に物流効率化の努力義務がある

物流効率化法では、2025年4月から、荷主や物流事業者に物流効率化の努力義務が課されています。主な取組は、積載効率の向上、荷待ち時間の短縮、荷役等時間の短縮です。具体的な対応は、発荷主、着荷主、運送事業者、倉庫業者などの区分によって異なります。

例えば、トラックの到着が同じ時間帯に集中する現場では、受付方法を変えるだけでなく、出荷準備や荷卸しの能力に合わせて受渡し時刻を調整する必要があります。運送会社が早く到着しても、商品や作業員の準備ができていなければ待機は減りません。

検品方法やパレットの活用についても、運送・倉庫・荷主で認識をそろえます。誰がどの作業を担い、必要な情報をいつ渡すかを決めることが、制度対応と現場の負担軽減の両方につながります。

出典:国土交通省|「物流効率化法」理解促進ポータルサイト|物流の持続的な成長を図るため

物流効率化法を改正しました

2026年から一定規模以上の事業者に計画・報告などが義務付けられている

2026年4月からは、一定規模以上の事業者を特定事業者として指定し、中長期計画の作成や定期報告などを義務付ける制度が施行されています。主な指定基準は次のとおりです。

対象区分

指定基準

算定時の主な確認事項

荷主・連鎖化事業者

年間取扱貨物重量9万トン以上

発送・受取など、区分ごとの算定方法を確認

貨物自動車運送事業者等

保有車両150台以上

年度末の事業用自動車の台数を確認

倉庫業者

年間入庫貨物重量70万トン以上

寄託を受けて保管する倉庫への年間入庫重量を確認

倉庫の基準は、ある一日の在庫量や延べ保管日数ではなく、年度内に入庫した貨物重量が対象となります。自社の売上や従業員数だけで該当性を判断しないようにしましょう。

物流統括管理者、いわゆるCLOの選任義務は、特定荷主と特定連鎖化事業者が対象です。すべての運送会社や倉庫に共通する義務ではありません。

対応に当たっては、まず事業者区分と算定方法を確認し、必要なデータを集める担当者を決めます。現場だけでは把握できない出荷条件や取引情報もあるため、営業、調達、在庫管理などの関連部門と連携して改善計画をつくる必要があります。

出典:国土交通省|特定事業者の指定

出典:物流統括管理者(CLO)の選任

物流業界の人手不足の解決策|運送業・倉庫で取り組む6つの対策

人手不足への対策は、従業員が働き続けられる条件を整えることと、必要な作業時間を減らすことを並行して進めます。

以下の6つから、自社の不足工程に合う方法を選びましょう。

労働環境と採用・教育を見直し、従業員の定着を高める

運送業と倉庫の人手不足対策で最初に見直したいのは、採用の前提になる給与、休日、勤務時間の見通し、作業負担です。応募が少ないのか、内定を辞退されるのか、入社後に辞めるのかを分ければ、改善するべき条件が明確になります。

まず、求人には、一日の仕事、担当エリア、必要な資格、教育期間、給与の内訳を具体的に記載します。未経験者については、指導担当と独り立ちの基準を決め、教育中の人数を通常の処理能力にそのまま算入しないようにしましょう。

さらに、短時間勤務や業務分担も選択肢です。重量物を扱う作業と梱包・事務を分けるなど、担当範囲を調整できれば、働ける人の幅を広げられる可能性があります。従業員への聞き取りでは、辞めたい理由だけでなく、続けるために必要な条件を確認することも有効です。

外国人材を検討する場合、自動車運送業と物流倉庫では制度や業務範囲が異なります。物流倉庫分野の特定技能1号評価試験は、2026年10月26日に出張試験方式の申込受付が始まり、CBT方式は同年12月の開始を目途に準備が進められています。育成就労の試験は2027年4月の制度開始以降に予定されています。制度の対象に追加されたことと、直ちに採用できることを混同せず、最新の運用状況を確認してください。

出典:国土交通省|自動車運送業分野における特定技能外国人の受入れについて

出典:国土交通省|物流倉庫分野における特定技能外国人・育成就労外国人の受入れについて

出典:日本海事協会|物流倉庫分野特定技能1号評価試験(出張試験方式)の申込受付開始のお知らせ

荷待ち・荷役時間を減らし、ドライバーの負担を軽くする

荷待ち削減の出発点は、受付から荷役の開始・終了までの時刻を記録し、どこで待機が発生しているかを把握することです。到着が集中する時間帯と待機の理由が分かれば、予約枠や作業員の配置を、倉庫が実際に受け入れられる量に合わせて調整できます。

荷役の負担を減らす方法には、パレット、台車、搬送設備などの活用があります。ただし、パレットのサイズや荷姿が相手先と合わなければ、積替えが増えて逆効果です。共通して使える荷姿とともに、回収方法、保管場所、費用負担まで関係者で合意する必要があります。

また、受入能力との調整は、予約システムを使う場合にも欠かせません。検品や荷卸しの人員が不足したままでは、予約時刻を守った車両まで待たせてしまうためです。出荷情報を先に共有し、荷物と作業員の準備を整えて初めて、受付の改善が待機の削減につながります。

改善の打合せでは、どちらの会社に責任があるかを先に決めるより、待機が起きた条件を記録で共有するほうが具体策を出しやすくなります。特定の納品先や時間帯から試し、効果を確かめて展開する方法が実行しやすいでしょう。

共同配送・中継輸送・モーダルシフトで輸送を効率化する

共同配送は、複数の荷主の荷物をまとめて運ぶ方法です。中継輸送は長距離の運行を途中で分担し、モーダルシフトは幹線輸送の一部を鉄道や船舶などへ転換する方法を指します。

方法

主に見直す対象

実施前に確認する条件

共同配送

車両ごとの積載や重複する配送

配送先、温度帯、納品時刻、荷姿

中継輸送

長距離の運行分担

中継地点、引継ぎ方法、待機時間

モーダルシフト

長距離の幹線輸送

運行時刻、輸送日数、前後のトラック輸送

上記は積載のむだや長距離運行の負担を見直すための方法ですが、運送会社だけで決められるとは限りません。共同配送では荷主が出荷をまとめ、鉄道・船舶への転換では納品までの時間に余裕を設けるなど、荷物を出す側の調整も必要です。運賃に加え、積載率、拘束時間、納期への影響を同じ条件で比較すると、自社に合う輸送方式を判断しやすくなります。

一方、宅配では幹線輸送の効率化に加え、届け先での再配達を減らす対応も課題になります。配送日時の指定や宅配ボックスなど、確実に受け取れる方法を案内するのは、そのためです。企業間輸送か宅配かによって働きかける相手は異なりますが、発送・受取側の条件調整と輸送の改善を組み合わせる点は共通しています。

出典:国土交通省|「総合物流施策大綱(2026 年度~2030 年度)」を閣議決定~2030年度までの物流革新の「集中改革期間」における輸送力不足の解消に向けて~

倉庫管理システムと作業標準化で、探す・転記する時間を減らす

倉庫管理システム、WMSは、在庫数量や保管場所、入出荷情報などを管理する仕組みです。商品コードや保管場所をそろえ、バーコード検品や作業指示と連携すれば、探す時間や転記の手間を減らすための基盤になります。

導入前に整理するべきなのは、商品名・コードの重複、保管場所の表示、返品や破損品などの例外処理です。現場のルールが曖昧なままでは、システム上の指示と実際の作業が一致しなくなる場合があります。

また、システムの導入と併せて、出荷頻度の高い商品を取り出しやすい場所に置き、梱包資材の補充方法を統一するなどの改善も進めましょう。紙の作業をそのまま画面へ移すだけでは、不要な確認や重複入力が残ることがあります。

受注情報を再入力せずに使うには、基幹・受注システムとの連携も必要です。転記を減らせても端末操作や例外処理で作業が止まれば効果は限られるため、繁忙日の運用と併せて、担当者の操作研修や通信障害時の手順まで試しておきましょう。通常時だけでなく、荷物が多い日や返品が発生した日にも使い続けられることが、導入の判断基準になります。

搬送・仕分けなどの自動化を、効果の大きい工程から進める

自動化は、倉庫全体を一度に置き換える方法だけではありません。移動が多い工程には搬送ロボットやコンベヤー、仕分けに時間がかかる工程には仕分け設備など、負担の大きい作業から検討できます。

搬送機器が現場に合うかは、荷物のサイズ・重量に加え、通路幅や床の段差、既存設備との接続で変わります。カタログの処理能力をそのまま自社に当てはめず、実際の商品とピーク時の物量で試すことが必要です。

さらに、保守、設定変更、教育、停止時の代替作業も含めて比較しましょう。搬送が速くなっても、後工程の検品や梱包に荷物が集中すれば、出荷全体の能力は上がりません。省人化できる時間と、新たに必要になる作業を差し引いて判断します。

現場の担当者が、負担の変化や扱いにくい点を試行段階で伝えられるようにしておくことも重要です。仕様上の性能だけでなく、忙しい時間帯に使い続けられるかを確認してから拡張しましょう。

物流代行や外部人材を活用し、自社で抱える業務を調整する

外部の支援は、自社に残す業務の範囲によって使い方が変わります。繁忙期だけ既存の現場に人員を補うなら外部人材、保管や出荷の運営そのものを継続して任せるなら物流代行が選択肢です。

まず、一時的な欠員を埋めたいのか、自社で抱える作業量を減らしたいのかを分けましょう。

外部人材を受け入れる場合、必要な人数を確保できても、仕事を教える人や作業手順がなければ、すぐに処理能力が増えるわけではありません。任せる工程と教育の担当、現場の連絡先を決めておくことが、応援を実際の戦力につなげる準備になります。派遣と請負では指揮命令などの運用が異なるため、契約の名称だけでなく、現場で誰がどのように指示するかまで整理する必要があります。

一方、物流代行では、自社と委託先の間でどこまで業務を引き渡すかが重要です。対象商品と物量を基に、出荷締切、返品、流通加工、システム連携の範囲をそろえて見積りを比べます。保管・入出庫・梱包・配送の料金だけでなく、自社に残る在庫管理や委託先との調整費用も含めなければ、総額を比較できません。

継続して委託するには、通常日だけでなく、セールなどで物量が増えた日にも対応できるかが判断の分かれ目です。委託先にも処理能力の上限があるため、開始時期と繁忙期の受入量を先にすり合わせ、誤出荷時の連絡や復旧方法まで合意します。品質基準と役割を共有しておくことで、外部へ任せた後も、自社が対応すべき範囲を把握できます。

自社に合う人手不足対策の選び方と進め方

対策を実行へ移すには、「何を改善するか」「どの条件で試すか」「何をもって成功とするか」を決めます。

設備名や採用手法を先に選ぶより、必要な能力と不足している工程を整理したほうが、比較の軸をつくりやすくなります。

人が足りない工程と時間帯を特定する

まず、普段の作業と繁忙時の作業を分けて記録します。運送では便数、走行、荷待ち、荷役の時間、倉庫では出荷明細数、移動、検品、梱包の時間を確認しましょう。

平均値だけでは、夕方に梱包が集中する、月曜日の入荷で検品が遅れるといった問題を見落とします。曜日や時間帯別の物量と、担当できる人員を対応させることが重要です。

現場で確認した状況

最初に検討する対策

応募が少なく、欠員が続く

募集条件、通勤・勤務時間、採用対象の見直し

入社しても短期間で辞める

説明と実態のずれ、教育、作業負担の改善

特定の時間帯だけ作業が滞る

配置変更、受渡し時刻、出荷量の平準化

探す・運ぶ・転記する時間が長い

保管場所の整理、標準化、システム・搬送の検討

全体の物量が継続的に処理能力を超える

採用、設備、自社と外部の業務分担の比較

表の項目を手掛かりに、作業の記録と現場への聞き取りを照合すると、優先して改善する工程を絞りやすくなります。例えば、梱包の滞りによって出荷が遅れているなら、ピッキングだけを速めても締切に間に合うとは限りません。前後の工程への影響も踏まえ、全体の処理を最も妨げている箇所から検討しましょう。

費用・導入期間・運用条件で対策の優先順位を決める

候補が決まったら、初期費用と月々の費用、効果が出るまでの期間、必要な準備をそろえて比較する段階です。安価でも教育に時間がかかる方法と、処理能力は高くても工事中に出荷を止める設備では、実施できる時期や現場への影響が変わります。

費用対効果の試算では、削減できる作業時間に加えて、保守、システム利用料、運用担当の時間、追加の資材費などを含めます。具体例を挙げると、月100時間の作業削減を見込むと仮定しても、その時間をどの業務へ振り向けるかが決まらなければ、利益が同じように増えるとは限りません。作業時間の削減と、実際の支出減や処理量の増加を分けることで、投資によって得たい効果を具体化できます。

自社だけで改善できる動線や手順は試行を始めやすく、荷主との納品時刻の変更は調整が必要です。実施の速さと影響の大きさを分け、担当者、相手先、期限を明記しましょう。

さらに役員へ提案する際は、現状の困りごと、候補の比較、必要な予算、検証する期間、継続・中止を判断する条件を一枚にまとめると説明しやすくなります。省人化の名称ではなく、どの作業をどれだけ改善する計画かを示してください。

生産性・残業・定着・品質を確認し、改善を続ける

導入後は、一人当たりの出荷件数や一件当たり作業時間に加え、残業、荷待ち、誤出荷、事故、定着状況を確認します。処理件数が増えても、ミスや残業が増えていれば、負担が別の工程へ移っている可能性があります。

改善前後を比べるときは、物量、商品構成、繁忙日か通常日かをそろえましょう。重い商品が多い月と小型品が中心の月を、そのまま同じ基準で評価すると判断を誤ります。測定方法も統一し、担当者の感覚だけで効果を決めないことが必要です。

省人化で生まれた時間は、教育や品質改善、休暇を取りやすい配置に振り向けられます。従業員が負担の軽減を実感できれば、改善の継続に協力を得やすくなります。

改善を一度の導入で終わらせないためには、現場と管理部門が定期的に結果を振り返る場が必要です。追加の支援を相談する場合も、対象工程、通常時と繁忙時の物量、商品の条件、改善したい点を共有すれば、前回の対策で解消した問題と、残っている問題を区別して話し合えます。

物流の人手不足は、原因に合った対策を組み合わせて改善する

物流の人手不足には、担い手の減少、働く条件、荷待ち、小口・多頻度配送、倉庫作業の繁閑差や属人化が関わっています。自社では、運送と倉庫のどの工程に負荷が集中しているかを確認し、採用・定着と作業改善を組み合わせることが必要です。

まずは、直近の通常日と繁忙日の作業を記録し、遅延や残業が生じる工程を一つ選びましょう。その工程について、手順や配置の変更、荷主との調整、システム・設備、外注の候補を比較し、試行の担当者と期限を決めます。

社内だけで判断しにくい場合は、工程別の物量と時間、商品の条件、必要な納期、予算の範囲を整理して相談してください。業界全体の人手不足を背景として理解しながら、自社で減らせる作業と確保するべき人員を分けることが、実行できる改善計画につながります。

梅原 真琴

梅原 真琴

人材業界で​7年間、​一貫して​企業の​採用課題に​向き合い、​セールスマネージャーと​して​運輸業などを​中心に​累計300社以上の​採用を​成功に​導く。​その​中で、​学歴や​経験で​可能性が​閉ざされが​ちな​若者と、​人材不足に​悩むノンデスク領域の​企業との​間に​大きな​機会が​あると​感じ、​2023年に​株式会社クロセスを​設立。​「しごとで​笑える​若者を​増やす」を​ビジョンに​掲げ、​未経験・​若年層に​特化した​求人メディア​「ジョブリット」を​運営。​若者の​可能性に​火を​つけ、​輝く​未来の​創出を​目指す。​

↑