
求人と面接を重ねて採用した新人が、数ヶ月で辞めてしまうと悩んでいませんか。現場で「運送業は離職率が高いから仕方がない」と言われても、研修や勤務条件を変える余地がないのか、採用担当者としては気になるでしょう。
最新の公的資料では、2025年の「運輸業・郵便業」の年間離職率は9.0%で、調査産業計の13.7%を下回っています。
ただし、これはトラックドライバーだけの数値ではなく、新人の早期退職を示す指標でもありません。自社の定着を改善するには、統計の対象を確認したうえで、退職理由と配車・勤怠・研修の記録を照合することが必要です。
本記事では離職率の読み方、ドライバーが辞める理由、定着率を高める7つの対策を解説します。社内で使える計算例と進め方も紹介するので、改善案をつくる際の参考にしてください。
目次
運送業の離職率は高い?公的資料とトラックドライバーのデータの違い
離職率を比較するときは、産業と職種、集計期間、対象者の区分をそろえましょう。
「運送業」という見出しで紹介されている数字も、実際には広い産業区分や一社の実績である場合があるため、出典まで確認するのが重要です。
公的資料では「運輸業・郵便業」の離職率は9.0%
厚生労働省が2026年8月31日に公表した「2025年雇用動向調査」では、運輸業・郵便業の離職率は就業形態計で9.0%です。同じ年・区分の調査産業計は13.7%で、運輸業・郵便業のほうが低くなっています。
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就業形態 |
運輸業・郵便業の離職率 |
調査産業計の離職率 |
|---|---|---|
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計 |
9.0% |
13.7% |
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一般労働者 |
8.1% |
11.4% |
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パートタイム労働者 |
12.2% |
19.9% |
一般労働者は、常用労働者のうちパートタイム労働者以外を指す区分で、正社員に限りません。そのため、表の8.1%は「正社員の離職率」ではなく、一般労働者という就業形態の数値として読む必要があります。
同じ条件で比べると、運輸業・郵便業の離職率が調査産業計より高いとは言えません。ただし、産業全体の年間の数値と、自社の新人が短期間で辞める問題は別です。業界平均を確認するだけでは、特定の営業所や入社時期に集中する退職を把握できないため、自社の集計も必要になります。
参考:厚生労働省|2025年雇用動向調査|産業別の入職と離職
運送業の離職率とトラックドライバーの離職率を区別する
「運輸業・郵便業」には、道路貨物運送だけでなく、鉄道、航空、郵便なども含まれます。また、産業別の集計は、その産業で働く運転者以外の従業員も対象になります。9.0%を「全国のトラックドライバーの離職率」として紹介することはできません。
雇用動向調査は、対象となる主要産業で常用労働者5人以上を雇用する事業所から抽出して行う調査です。すべての運送会社を個別に調べて平均したものではなく、集計結果を復元・推計しています。
したがって、この産業別の9.0%から、トラック運転者だけの全国平均を求めることはできません。別の調査と比較する際も、運転者だけを対象とした数字か、事務や倉庫などを含む運送会社全体の数字かによって意味が変わります。
対象をそろえることが、自社の離職率が高いかどうかを考える前提です。
離職率の計算方法と定着率・早期離職率の違い
雇用動向調査の年間離職率は、年間の離職者数を1月1日現在の常用労働者数で割り、100を掛けて計算します。社内で同じ考え方を用いる場合も、対象者と期間を明記しましょう。
年間離職率=年間の離職者数÷年初の対象労働者数×100
例えば、年初の対象労働者数が50人、年間の離職者が3人と仮定すると、年間離職率は3÷50×100=6%です。
一方、定着率は、ある期間に入社した人たちが、一定期間後にどれだけ在籍しているかを見る指標として管理できます。例えば同じ期間に入社した10人全員を3ヶ月追い、8人が在籍していると仮定すると、3ヶ月定着率は80%です。同じ条件で2人が退職していれば、3ヶ月以内の離職率は20%になります。
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指標 |
分母の例 |
分子の例 |
確認したいこと |
|---|---|---|---|
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年間離職率 |
年初の対象労働者数 |
年間の離職者数 |
一年間の人の出入り |
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3ヶ月定着率 |
3ヶ月追跡できた入社者数 |
3ヶ月後の在籍者数 |
入社後の受入れ・定着 |
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3ヶ月以内離職率 |
3ヶ月追跡できた入社者数 |
3ヶ月以内の退職者数 |
早期離職の発生 |
年間離職率と新人の定着率は分母が異なるため、「100%-年間離職率」で新人の定着率を求めることはできません。新卒の3年以内離職率とも比較条件が異なります。社内では指標の名称だけでなく、誰をいつまで追った数字かを共有してください。
運送業のドライバーが離職する主な理由
退職には、勤務、待遇、職場の関係、入社前後の認識のずれなど、複数の要因が重なる場合があります。
勤務時間や給与の額だけでなく、予定を立てられるか、困ったときに相談できるかも、働き続ける判断に関わります。以下の項目を、全国の退職理由の順位ではなく、自社の事情を整理する観点として見ていきましょう。
長い拘束時間と休みの取りづらさ
運行が長いことに加え、荷待ちや荷役、急な配車変更によって帰宅時刻が読めない状況は、就業継続を難しくする要因になり得ます。休日の日数が確保されていても、直前まで予定が分からなければ、育児・介護や通院、家族の予定と合わせにくくなります。
労働時間、拘束時間、休息期間を区別しましょう。拘束時間は労働時間と休憩時間を含む、使用者に拘束されている時間です。休息期間は、業務終了から次の始業までの、使用者の拘束を受けない期間を指します。
同じ拘束時間でも、予定どおりに帰れる勤務と、直前の変更が重なる勤務では、生活への影響が異なります。勤務の長さに加え、本人が予定を調整できる余地があるかによって、続けやすさも変わるためです。運行記録と従業員の話を照合する際も、この二つを分ける必要があります。
休暇の取得実績があっても、欠員が出るたびに予定変更を求められたり、申し出をためらったりする状態では、安心して休めるとは感じにくいでしょう。休日の数と、必要なときに休める見通しの両方が、継続勤務を考える条件になります。
給与・手当や評価への不満
給与への不満は、支給額の大小だけでは決まりません。仕事内容や負担に見合うか、手当の条件が分かるか、評価の理由に納得できるかも関わります。収入が高くても、長い勤務を前提とする働き方が本人の希望と合わなければ、続けにくさは残ります。
例えば、走行距離や売上だけで評価すると、荷主との調整、後輩の指導、安全確認などに使った時間が評価に表れにくいのが問題です。会社が必要としている仕事でも、担当した本人に貢献を認められた実感がなければ、不公平感につながる可能性があります。
さらに、手当や昇給の条件を理解できないままでは、今後どの程度の収入を見込めるかも分かりません。平均収入を上回る給与を払っていても、その金額が決まる理由や将来の見通しが伝わらなければ、不安は解消されにくいのです。
人間関係と若手への指導・相談体制の不足
一人で運行する時間が長い仕事でも、配車担当者や上司との意思疎通は必要です。質問すると強く叱られる、困ったときに連絡先が分からない、仕事の偏りを相談できないなどの状態では、不安を解消しにくくなります。
こうした不安は、本人の意欲だけでは解消できません。同乗研修で教わっていない作業を求められ、単独運行に移った後も質問相手が分からなければ、仕事を覚える機会そのものが不足します。新人の退職を根性の問題だけと捉えると、指導や受け入れの不足を見落とすおそれがあります。
相談の窓口があっても、聞き取った問題への対応まで見えることが必要です。話をした後の状況が分からなければ、相談しても変わらないと感じる可能性があります。誰が対応し、いつ本人へ状況を返すかを決めておくことが、意見を集めるだけで終わらせないために重要です。
入社前後のギャップと将来への不安
求人では運転が中心だと思っていたのに、実際には荷役が多かったり、日帰りと聞いていたが帰宅時刻が大きく変動したりなどの認識のずれは、入社後に仕事を続ける判断へ影響する可能性があります。
認識のずれは、採用担当者が現場の変更を把握できていない場合にも生じます。特定の高収入者だけをモデルに給与を説明したり、以前の勤務予定をそのまま案内したりすると、応募者は実際とは違う条件を前提に入社を決めかねません。待遇そのものに加え、入社前に何を期待していたかによっても、仕事への受け止め方は変わります。
さらに、免許を取得した後の担当業務や昇給、体力や家庭事情が変わったときの働き方が見えないと、長く勤務する見通しを持ちにくくなります。成長する道と、無理なく続ける道の両方を説明することが大切です。
退職理由として伝えられる言葉と、会社で調整できた条件が一致するとも限りません。例えば「家庭の事情」という説明でも、勤務変更を相談できていれば働き続けられた可能性はあります。理由を一つの項目に分類するだけでは、こうした調整の余地を見落とすことになります。
ドライバーの離職が運送会社に与える影響
離職の影響は、退職者の人数だけでは把握できません。
採用・教育のやり直し、運行を維持するための追加対応、残った従業員の負担を整理すると、改善へ使う時間と費用を検討しやすくなります。
採用・教育のやり直しと運行体制への影響
退職が続くと、求人の作成、応募対応、面接、入社手続き、同乗指導が繰り返し必要になります。広告や紹介の費用だけでなく、総務担当者と指導者が使う時間も会社の負担です。
新人が独り立ちするまでの期間は、通常の便を一人分として任せられるとは限りません。同乗指導のために先輩の便を調整すれば、指導する側の運行にも影響します。採用人数が戻っても、すぐに退職前と同じ輸送能力へ戻るわけではないのはこのためです。
さらに、欠員が出た路線によっては、協力会社への依頼、便の変更、受注の制限が必要になります。代わりに担当できる人を見つけやすいかは、必要な免許や車種、配送先での作業によって異なります。離職の損失は退職者の人数だけでなく、引き継ぐ仕事と補充までの期間によって変わるのです。
自社では、募集費、面接工数、研修時間、外注輸送費、運行できなかった便を確認します。採用単価だけを比較するより、入社後に担当業務を続けてもらえるまでの費用と時間を把握することが重要です。
残った社員への負担とさらなる離職
欠員の対応が特定の従業員に集中すると、追加勤務、休日変更、新人指導を同時に担う状況が生まれます。管理者が配車調整に追われれば、面談や教育に使う時間も減る場合があります。
新人は不安を相談できず、指導役も教える余裕を失う状態を放置すると、次の退職につながりかねません。採用による補充と、受け入れ体制の改善は並行して進めることが必要です。
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確認する負担 |
見るべき記録・状況 |
見直す論点 |
|---|---|---|
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運行の穴埋め |
追加勤務、担当便の変更 |
応援分担と運行可能な時間 |
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指導の集中 |
同乗日数、指導担当の勤務 |
教育工数と担当の分担 |
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休日の変更 |
予定と実際の休暇 |
予備体制と予定の共有 |
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相談の停滞 |
面談の実施、未対応の相談 |
連絡先と対応担当 |
欠員を埋めるために休息や安全確認を削れば、必要な運行体制そのものが損なわれます。追加勤務や休日変更の記録を、社員が負担を感じた場面と照合し、穴埋めが続いている便や担当者を特定しましょう。補充する人数とともに、無理なく運行できる範囲を考える必要があります。
運送業の離職を減らし定着率を高める7つの対策
定着対策は、採用担当者だけで完結する仕事ではありません。総務と現場管理者が、入社前の説明から研修、配車、待遇、相談までつなげて見直します。
自社の退職理由に合う項目を選びましょう。
採用時に仕事内容・給与・勤務条件を具体的に伝える
求人と面接では、主な配送先、走行距離、荷役、始業・終業の目安、休日、研修、給与の内訳を説明します。応募者が知りたいのは、待遇の見出しだけでなく、自分がどのような一日を送るかです。
繁忙期の勤務や担当変更など、負担が増える条件も共有しましょう。高収入のモデル例を使うなら、勤務日数、残業、担当業務などの前提を示し、通常の入社者にそのまま当てはまると受け取られないようにします。
また、職場見学や仕事紹介動画は、現場の理解を助ける方法になります。紹介する運行が、現在募集している仕事と一致しているかを確認し、採用担当者と配車担当者で説明内容をそろえることが必要です。
応募者の希望も具体的に聞きます。帰宅時刻や休日について会社が対応できる範囲を伝え、入社後に初めて大きな違いが分かる状態を減らしましょう。応募数の拡大と、仕事を理解して入社してもらう取組は分けて評価します。
若手の同乗研修と入社後の支援を仕組みにする
研修では、運転、荷役、配送先での対応、異常時の連絡を項目に分け、段階的に確認します。「しばらく横に乗って覚える」という運用だけでは、指導者ごとの違いを把握しにくくなります。
到達目標と確認表を用意し、単独運行を任せる判断を明確にしましょう。初めて担当する配送先で注意することや、分からない場面で作業を止めて連絡する方法も共有します。
配車や評価を担当する上司には言いにくい悩みもあるため、別の相談役を置くことも支援体制のひとつです。例えば入社後1ヶ月、3ヶ月に面談を行うなら、仕事の理解や不安が前回からどう変わったかを確かめられます。面談の回数を増やすことより、研修や勤務の調整へつなげることが重要です。
指導担当者の通常業務を調整し、教える時間を確保することも必要です。新人と指導役の双方が困りごとを伝えられるようにして、研修内容と配置を見直しましょう。
相談しやすい職場と公平な配車をつくる
配車の公平さは、全員に同じ便を割り当てることではありません。免許、経験、勤務可能な時間、担当業務を踏まえながら、負担が偏る理由を説明できることが重要です。
担当変更や休日調整は、いつ、誰が、どの条件で判断するかを共有します。疑問を持った従業員が、運行中以外にも相談できる機会を設けましょう。
強い叱責やハラスメントの相談では、通常の配車相談と別の連絡先が必要になる場合があります。相談を受ける担当と対応手順を決め、本人が不利益を恐れず話せるようにします。すぐに解決できない問題でも、対応状況を伝えるのが大切です。
匿名の意見収集も方法のひとつですが、少人数の職場では文章や担当路線から個人が推測される場合があります。共有範囲を絞り、集めた声を個人への非難に使わず、業務や管理の改善につなげてください。
ルート・荷待ちを見直し管理システムを導入する
勤怠と運行記録から、拘束時間、荷待ち、荷役、急な変更が集中する便を確認します。長い勤務の原因が遠距離の運転なのか、配送先での待機なのかによって、変更する条件は異なります。
ルートや配送件数を見直すほか、荷主と受付時刻、作業分担、出荷情報の共有を協議しましょう。自社の配車だけでは変えられない待機は、相手先と一緒に原因を確認することが必要です。
また、管理システムを使う場合も、何を共有して判断を変えるかを先に決める必要があります。配車情報と勤怠を関連付けて見られれば、担当の偏りや勤務の延長が起きる便を調べる材料になります。一方、紙と同じ内容を二重入力するだけでは担当者の負担が増えるため、実際の入力と配車判断の流れで試しましょう。
運行は、時間外労働、拘束時間、休息期間の基準を満たすことが前提です。そのうえで、減らした待機時間を帰宅時刻の安定や休息の確保へつなげ、本人が働きやすくなったと感じるかを確かめましょう。短縮分をすべて追加配送で埋めてしまうと、勤務負担を減らすという目的に届かないおそれがあります。
給与・手当と安全運転を評価する基準を整える
基本給、手当、昇給、賞与の条件を分かりやすく説明し、どの仕事が評価につながるかを共有しましょう。給与額を示すだけでは、本人が努力する方向や将来の収入を理解できない場合があります。
売上や走行距離だけでは評価に表れにくい貢献を拾うため、安全確認、荷主との関係づくり、後輩の指導なども評価項目の候補になります。無理な運行をしなければ評価されない仕組みになっていないか、日々の仕事と基準を照らし合わせるのが大切です。
特に安全の評価では、事故の有無という結果だけでなく、日々の確認や適切な報告も対象にする考え方が必要です。事故やミスの申告が不利益になると受け取られれば、報告をためらう動機になりかねません。問題を伝え、再発防止に参加する行動をどう評価するかまで、基準と説明をそろえましょう。
評価結果を伝える面談と、疑問があるときの確認方法も設けます。会社の収支と従業員の納得感を踏まえ、勤務時間を見直す場合は収入への影響も説明してください。制度の導入後は、何が分かりやすくなり、どの不満が残っているかを確認しましょう。
中型・大型免許の取得支援とキャリアパスを示す
免許や資格の取得支援は、担当できる仕事と将来の選択肢を広げるための施策です。補助額だけでなく、学習時間をどう確保し、取得後にどの業務を任せるかが分かれば、本人も仕事と成長の見通しを立てやすくなります。利用条件と、その後の働き方を一緒に伝えましょう。
取得後にどの車両や路線を担当できるか、給与や評価がどう変わるかを説明します。担当範囲が増えるなら、新しい荷役や配送先での研修も用意しましょう。
将来の道には、運転職を続けるほか、指導役、配車担当、運行管理、管理職などが考えられます。管理職になりたい人だけを評価せず、運転の専門性を高める希望も尊重することが大切です。
本人の希望と会社の配置を定期的に話し合い、体力や家庭事情の変化にも対応できるかを検討します。支援を始める前に条件を共有し、取得後の仕事を本人と会社で合意しておくと、期待のずれを減らしやすくなります。
女性や育児・介護中の社員が働き続けられる対応を進める
勤務時間、担当ルート、休暇の相談、更衣室やトイレ、荷役負担を点検します。女性だから、育児中だからという属性だけで希望する働き方を決めず、本人の事情と担当できる仕事を確認しましょう。
短時間勤務や近距離の担当を用意できるかは、営業所の業務と安全な運行体制を踏まえて判断します。現時点で対応できる範囲を説明し、状況が変わった際に再び相談できるようにしておくことも必要です。
制度があっても利用を申し出にくければ、実際には働き続ける選択肢になりません。相談を誰に伝え、いつまでに返答するかを決め、配車担当者と総務が認識をそろえましょう。
勤務を調整した社員の穴埋めを、毎回同じ人に任せる運用では、別の社員の休日や生活に影響が及びます。担当の分担と予備の運行体制まで設計することが、個人への配慮を継続できる仕組みにするために必要です。
自社の離職と定着を改善する3つのステップ
改善を進める際は、退職理由を集めるだけでなく、集計する指標と実施する施策を対応させます。
誰が何をいつ確認するかを決めることが、採用担当者だけで課題を抱えないためにも重要です。
退職理由と現場の声を集めて課題を特定する
退職時の聞き取りと在職者の面談を組み合わせ、勤務、給与、職場の関係、仕事内容、家庭事情などに分けて整理します。退職者は話しやすい理由だけを伝える場合もあるため、一人の発言を全社の原因にしないことが必要です。
聞き取りでは、「なぜ辞めるのか」だけでなく、どの場面で負担を感じ、誰に相談し、会社がどう対応したかを確認します。本人が話せる範囲を尊重し、原因を特定するために私生活の説明を強要しないようにしましょう。
聞き取った内容を勤怠、配車、研修の記録と照合すると、負担が生じた条件を具体化できます。例えば、帰宅時刻への不満でも、走行の長さと、予定外の待機や担当変更では見直す対象が異なります。会社が変更できる業務条件を絞ることが、理由の収集を改善へ進めるための次の段階です。
在職者からは、続けている理由と、今後も続けるために必要な条件を聞きましょう。退職者の話と合わせることで、失われた条件だけでなく、維持したい職場の良さも考えられます。個人の事情を必要以上に広めず、勤務や教育などの業務上の課題として整理し、現場管理者と総務で共有することが大切です。
離職率・早期離職人数・定着率を同じ条件で確認する
年間離職率は対象期間と年初人数を統一して計算します。早期離職は入社月や採用経路ごとに入社者をまとめ、決めた期間の在籍状況を追う方法が考えられます。
入社後3ヶ月・6ヶ月の在籍を比べる際に必要なのは、それぞれの期間を経過した人だけを対象にすることです。先月の入社者を6ヶ月定着率の分母に入れても、その人の6ヶ月後の結果はまだ分かりません。入社日と確認日を記録し、同じ期間を追跡した人同士で比べましょう。
小規模な会社では、一人の退職でも割合が大きく変わるため、率と実人数を併記することが重要です。定年、本人都合、会社都合などの内訳も合わせれば、人員交代による変化と、職場の課題に関わる退職を分けて考えやすくなります。
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社内の管理項目 |
記録する内容 |
|---|---|
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年間の離職 |
対象期間、年初人数、離職人数、主な区分 |
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入社集団の定着 |
入社期間、採用人数、確認日、経過した期間 |
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研修 |
担当者、実施内容、独り立ちの確認 |
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勤務・相談 |
拘束時間、予定変更、面談、対応状況 |
公的統計に合わせた比較と、自社の改善に使う指標は目的が異なります。社内の定義を決めたら毎回同じ条件で集計し、施策を始めた時期や採用人数の違いも合わせて確認してください。
優先する対策を決めて導入後の変化を確かめる
最初の施策は、問題の深刻さ、改善できる範囲、費用、担当者の工数で選びます。安全や法令対応に関わる問題は優先して改善し、そのうえで研修、予定共有、面談などの候補を検討しましょう。
例えば、新人が配送先での対応に不安を持つなら、同乗研修で扱う内容と、現場から連絡できる相談先が見直す対象です。休日の急な変更が問題なら、配車予定の共有時期と応援の分担を検討します。このように施策と課題の対応関係を決めてから、効果を測る指標を選びましょう。
合わせて、担当者、開始日、対象営業所、確認時期を決め、実施前後の退職人数、在籍状況、拘束時間、相談内容を確認します。定着率の変化を測るには一定の観察期間が必要で、短期間に退職がなかっただけでは効果を確定できません。
繁閑差や採用人数の違いも踏まえ、社員へ改善状況を返します。意見を集めるだけで終わらせず、続ける施策と修正する施策を決めることが、相談と改善をつなぐために必要です。
運送業の離職率・退職に関するよくある質問
離職率を使って会社を比較するときや、短期離職の理由を考えるときにも、数値の対象と実際の勤務条件を分けて見ることが大切です。採用側・求職者側のそれぞれが判断に迷いやすい点を整理します。
入ってはいけない運送会社一覧や離職率ランキングは信頼できますか?
集計期間、対象人数、離職の定義、情報の出所が分からない一覧やランキングだけでは判断できません。匿名の口コミや一人の体験を、特定企業や業界全体の離職率として扱うのも適切ではありません。
求職者は、仕事内容、給与の内訳、休日、研修、相談体制を実際の求人と面接で確認しましょう。採用側が離職率を開示する場合も、対象人数と期間を説明し、条件が異なる他社の数値と単純に順位付けしないことが必要です。
トラック運転手がすぐ辞めるのは本人だけの問題ですか?
本人の希望と仕事の違い、研修、勤務負担、職場の関係を合わせて確認する必要があります。短期離職だけで、意欲や適性がないと決めつけることはできません。
会社は採用時の説明、同乗指導、単独運行の判断、相談の機会を振り返りましょう。求職者も「やめとけ」といった掲示板の体験談をそのまま当てはめず、長距離、近距離、ルート配送など、実際の働き方を確かめるのが大切です。
ドライバーの退職理由は面接でどう伝えればいいですか?
事実に沿って簡潔に説明し、次の職場で希望する条件や仕事の続け方につなげます。前職への非難だけで終わらせず、何を確認したいかを伝えると、条件をすり合わせやすくなります。
例えば勤務予定を理由に退職した人なら、「帰宅時刻の変更が多く、家庭の予定との両立が難しくなりました。今後は勤務の見通しを確認したうえで、長く担当できる仕事を選びたいと考えています」と伝える方法があります。説明例は実際の退職理由と経緯に合わせ、経験していない相談や事情を付け加えないようにしましょう。
採用側は理由だけで判断せず、自社で提供する仕事の荷役、休日、給与、研修を具体的に説明し、同じ認識のずれが起きないかを確認しましょう。
運送業の離職率は対象を確認し、自社の定着改善につなげよう
2025年の公的資料における運輸業・郵便業の離職率は9.0%ですが、トラック運転者単独の離職率や新人の早期退職率ではありません。自社の状況を把握するには、分母、期間、対象者をそろえて集計する必要があります。
次に、退職理由と在職者の声を勤怠・配車・研修の記録と照合し、改善できる課題を一つ選びましょう。入社前の説明、教育、相談、勤務、評価などの7つの対策から、担当者と期限を決めて着手します。
社内や外部の支援先へ相談するときは、入社時期、退職までの期間、仕事内容、教育の状況、負担が集中する場面を整理してください。離職率の高さを嘆くだけでなく、社員がどの条件なら働き続けられるかを確かめることが、実行できる定着改善につながります。
梅原 真琴


